2024年11月21日の「支える会結成集会」に寄せられた呼びかけ人からのメッセージです。
川嶋みどりさん (日本赤十字看護大学名誉教授)
医療現場のハラスメントは、受けた本人の苦痛ばかりか医療・看護の受け手にも影響を及ぼします。患者さんの尊厳あるいのちを守る職場で、スタッフの人権が守られない職場環境は何としても改めるべきです。
中原のり子さん (医師の過労死 家族会 共同代表)
私は1999年、亡夫小児科医師・中原利郎が長時間労働・過重労働が原因で過労自死した妻・中原のり子です。労災認定は地裁勝訴まで8年、民事裁判は最高裁で和解終結まで11年の月日を費やしました。私自身、薬剤師として病院勤務していたので、医師・看護師の多忙な労働環境は熟知していました。研修医1年目から働く夫が、いつか仕事が原因で死んでしまうかもしれない。と漠然と思う日もありました。家計簿に帰宅時間、深夜の呼び出しなど、労働時間を書き留めていた時もありましたが、いつしか忙しくて当たりまえ・・と感じるようになってしまいました。
私自身が遺族として過労死防止の活動に身を投じ「過労死等防止対策推進法」制定に尽力しました。法律ができても尚、過労死は止まることなく精神疾患は寧ろ増え続けて、令和になってからは精神疾患の申請数も認定数も過去最多を記録することになりました。すべての職種の中で過労死ワースト3は「医療」「運輸」「建築」であるにも拘らず、他の職種より5年遅れて本年4月からスタートの働き方改革です。過労死家族会には医師・看護師の過労死遺族・当事者が極めて多いです。命と健康を捧げて患者の為に尽くすことは本来の医療業務からは逸脱しています。
そのように訴えているにも関わらず、本年11月15日に22歳の新人看護師のパワハラ自死案件の記者会見が行われました。「生きる価値なんてどんどんなくなっていく」と書き残し、若い命がまた一つ喪われてしまいました。忙しすぎる環境、人手不足によりハラスメントを行う状況が医療現場では常態化しています。職場のスタッフは疲弊しドンドン追い込まれていきます。
昨年は26歳の専攻医の過労自死のニュースが流れました。私は専攻医の母と【医師の過労死 家族会】を作りました。なんとか真の意味での働き方改革を進めたいという気持ちです。
しかし、政府は多忙な医師の仕事を看護師らに振り分けて、夜間対応・カルテ入力を任せて残業減を狙う取り組みもあるようです。医療事故が起きて看護師ら5人が業務上過失致死容疑での告訴状を県警に提出予定という深刻な状況もあります。
医師・看護師が安心して働ける職場環境を作ることが喫緊の課題です。どうぞ、仕事が原因で身体を壊すことのない社会を目指して、共に頑張りましょう。
笑福亭松枝さん (落語家・名誉棄損裁判原告)
~パワハラ、モラハラ、他人の事。今の私は忙しい。聞こえないふり、もみつぶし。覆い隠しに、無かった事に。けれど、泣いてる人がいる。誰かの助けを求めてる。~
南守さん (福祉・介護・医療者労働組合委員長・全国労働組合連絡協議会(大阪)議長)
愛仁会裁判を支える会結成集会にお集まりの皆さん。本来でしたら争議当該の所属労働組合の委員長として、皆様に直接お礼を申し上げなければならないところ、どうしても外せない所用があり、このように文書にてのあいさつとなる非礼をお許しください。社会医療法人愛仁会のパワハラ問題との闘いでは、支える会準備会の段階から、皆様からのご支援が当該を先頭に大きなささえとなっています。引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。
誠に残念なことですが、私たちの労働組合が組織する福祉・医療の現場では、労働者に対するハラスメントや利用者・患者に対する虐待が珍しくありません。個別の現場が抱えている問題はもちろんあるのですが、全体的な問題として医療や福祉に対する公的予算が抑制され続けている中で、人手不足やまともな事業体ほど損をする構造が作られていることが挙げられます。愛仁会における取組もこうした構造的問題との闘いと結合して進めていきたいと考えています。
さて、島本さん。この集会に至るまで本当に頑張ってきましたね。ハラスメントとの闘いはそれを否定する二次加害との闘いでもあり、精神的にとても苦しいものです。多くの労働者が泣き寝入りを強いられるのも、致し方のない側面があります。しかし、みんなが泣き寝入りを続ける限り、労働者の心を破壊するハラスメント構造が変わることはありません。闘いのしんどさを引き受けて立ち上がることは大変なことですが、世の中を良くしていくために誰かがやらなければならないこと。あなたが今日までそれを引き受けてきたことは、あなた一人でなく、すべての労働者の希望です。これからも組合は全力で支えます。集会に参加されている皆さんもどうか島本を支えてやってください。
頑張っている島本さんに中国の作家、魯迅(1881-1936)の言葉を贈ります。
元々地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道になる。
福祉・介護・医療労働者組合
執行委員長 南 守